なお、成長率を1 より大きくするためには、賭けの期待値 (対数期待値ではなく通常の期待値)は必ずプラス(賭け金 1 単位当たり期待値が 1 より大きい)でなければならない。 これを示す。
今考えているのは
「確率で賭け金が 倍、で 倍、…で 倍()」
という賭けなので、賭け金1単位当たりの期待値は、理論的には
になるはずである。実際に賭けを回繰り返した時の各回の結果の平均値は、
であるが*1、が大きくなると両者は一致するはずである(大数の法則)。この値が仮に 1より小さい、として式に書くと、
となる。一方で、成長率 は、
で、成長率を 乗したものは 𝑅 の相乗平均である。
ここで、(相乗平均)(相加平均)という定理
個の任意の正の数 に 対して
が常に成り立つ
から、結局期待値が1より小さい場合は相乗平均も 1より小さいので、
という関係が成り立つことがわかる。成長率は 1より小さい数 を 乗した数になるので、必ず 1 より小さくなる。成長率が 1 より大きくなるためには、少なくとも期待値は 1 より大きくなくてはならない。
当然ながら、期待値が1より小さい賭けは、賭け金を調整する等賭け方を変えるようなことをしても無駄で、やればやるほど損をする。
*1:については2-1節参照