1-5.ポートフォリオの分散

1-4.の例で、分散投資した場合に各株資産の分散を合わせる方法はわかった。この時、各資産の分散は

𝜎_𝑐^2=𝑎_𝑖^2𝑛𝑑_𝑖^2

で同じ値になる。では、各資産を合計したポートフォリオの分散はどうなるだろうか。
複数の株を組み合わせた全体の値動きは、各株が同時に値上がりするか、バラバラに動くかによって変わる 。
まず2 資産の場合について考えると 、 一般に次のことが成り立つ ことが知られている 。

2つの確率変数𝑋𝑌があったとき、𝑋+𝑌の分散𝑉(𝑋+𝑌)は、

𝑉(𝑋+𝑌)=𝑉(𝑋)+𝑉(𝑌)+2𝐶𝑜𝑣(𝑋,𝑌)

となる。ただし、𝐶𝑜𝑣(𝑋,𝑌)𝑋𝑌の共分散。
共分散は直感的にわかりにくい統計値であるが、𝑋𝑌相関係数から考えると直観しやすい 。一方の株が上昇するとき、他方も同じ程度上昇すれば相関係数 1 、一方の上昇下落に全く関係なく上昇下落する場合は相関係数 0 、一方が上昇するとき同程度に他方が下落すれば相関係数-1 である。相関係数𝜌 (−1\lt𝜌\lt1)、𝑋𝑌標準偏差𝜎_𝑋𝜎_𝑌とすると、 定義上、相関係数 と共分散には 、
𝐶𝑜𝑣(𝑋,𝑌)=𝜌𝜎_𝑋𝜎_𝑌の関係がある、よって、

𝑉(𝑋+𝑌)=𝑉(𝑋)+𝑉(𝑌)+2𝜌𝜎_𝑋𝜎_𝑌

と書ける。仮に𝑋𝑌が無相関( 𝜌=0)であれば

𝑉(𝑋+𝑌)=𝑉(𝑋)+𝑉(𝑌)
=𝜎_𝑋^2+𝜎_𝑌^2

であり、完全相関(𝜌=1)であれば

𝑉(𝑋+𝑌)=𝑉(𝑋)+𝑉(𝑌)+2𝜎_𝑋𝜎_𝑌
=𝜎_𝑋^2+𝜎_𝑌^2+2𝜎_𝑋𝜎_𝑌
=(𝜎_𝑋+𝜎_𝑌)^2

である。3 つ以上の資産がある場合も、𝑋+𝑌を新しい確率変数とし 、3 つ目の確率変数 𝑍に対して同じ方法を繰り返せばよいから、結局、分散 𝜎_1^2, 𝜎_2^2, …, 𝜎_𝑘^2𝑘個の資産を合計した資産の分散𝜎_𝑊^2 は、
各資産が資産が無相関であれば、

𝜎_𝑊^2=𝜎_1^2+𝜎_2^2+⋯+𝜎_𝑘^2

完全相関であれば、

𝜎_𝑊^2=(𝜎_1+𝜎_2+⋯+𝜎_𝑘)^2

となる。今の場合、各資産の標準偏差が同じ値𝜎_𝑐になるように資産配分することを考えているので、合計資産の分散は、各資産が無相関であれば
𝜎_𝑊^2=𝑘𝜎_𝑐^2
完全相関であれば
𝜎_𝑊^2=(𝑘𝜎_𝑐)2
となる。
完全相関は、一方の株が上昇/下落すれば、それに完全に比例して他方も上昇 下落する場合のことである。ある株に完全相関する株や無相関の株は実際にはなかなか見つからないが、「 XX ショック 」のような大きな事件があった際には ほとんどの株が下落したりすることを考えれば、 株式相場全体では各株価は正の相関をもって動いていると考えられるので、実際に複数株でポ ートフォリオを組んだ場合、各株資産の相関は、 大雑把には 完全相関と無相関の間のどこかにあると考える 。完全相関に対する無相関の分散の比は、𝑘𝜎_𝑐^2/(𝑘𝜎_𝑐)^2=1/𝑘なので、資産を𝑘種類の株に分散投資すれば、ポートフォリオの分散は各株が無相関の時最大で 1/𝑘標準偏差1/\sqrt{𝑘}になる。 これが分散投資の効果である。下の表は 1 から 6 までの𝑘の値についての 1/\sqrt{𝑘}の値である。
各株が無相関の場合、4 資産に分散すれば、ポートフォリオの分布の広がり(標準偏差)は半分になる。
 

分散する株数

1

2

3

4

5

6

標準偏差(1/\sqrt{k}倍)

1

0.707

0.577

0.5

0.447

0.408

 

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