実は、賭け(2)が期待値で(1)を上回るにもかかわらず成長率が負になってしまうのは、「資産の全額を繰り返し賭ける」という点が原因になっている。
より効率の良い方法の一つとして、 資産の全額ではなく、 毎回資産の一定比率を賭けることを考える。
全資産のうち比率 を掛けた金額を毎回賭けるとすると、
「賭け金が確率で倍になる」
という賭けは、資産全体から見れば
「から賭け金 が引かれ、賞金 が加わることが確率 で起きる」
ということだから、
「確率で資産が になる」すなわち
「確率で資産が になる」すなわち
「確率で資産が 倍 になる」
ということである。よってこの場合成長率を最大化する問題は、を変化させたとき の対数期待値を最大化する問題と考えることができる。
の関数としての の対数期待値 を とすると、
なので、の一般項の一階微分は
二階微分は
となる。の二階微分は分母分子が正で全体にマイナスがついているので、各項が必ず負になる。よって のグラフは上に凸である。
したがって、の一階微分をゼロと置いた方程式
を解けば、を最大化する を求めることができる。 この は「ケリー基準」とか「ケリールール」と呼ばれるものである*1。 この式は についての 次方程式になるので、高次の場合はには解析的には解けず、数値計算して解を求めることになる。