2- 2 定率を賭ける(ケリー基準)-1 最大化の例

定率賭けによる対数期待値を最大化の例

先述の賭け(1)(2)を、全資産の定率を賭ける方法で考え直してみる。

賭け(1):確率 0.6 で賭け金が 1.1 倍にな り、確率 0.4 で賭け金が 0. 9 倍になる
賭け(2):確率 0.6 で賭け金が 1.5 倍になり、確率 0.4 で賭け金が半分になる

資産の一定比率𝑥を毎回賭ける。

(1)は 𝑝_1=0.6,  𝑝_2=0.4,  𝑟_1=1.1,  𝑟_2=0.9
(2)は 𝑝_1=0.6,  𝑝_2=0.4,  𝑟1=1.5,  𝑟_2=0.5

だから、賭け(1)で資産を最大化する𝑥が満たす方程式は

\genfrac{}{}{}{0}{0.6}{𝑥+\genfrac{}{}{}{0}{1}{1.1−1}}+\genfrac{}{}{}{0}{0.4}{𝑥+\genfrac{}{}{}{0}{1}{0.9−1}}=0

で、解は𝑥=2 である。
賭け(2)で資産を最大化する𝑥が満たす方程式は

\genfrac{}{}{}{0}{0.6}{𝑥+\genfrac{}{}{}{0}{1}{1.5−1}}+\genfrac{}{}{}{0}{0.4}{𝑥+\genfrac{}{}{}{0}{1}{0.5−1}}=0

で、解は𝑥=0.4である。

𝑀(𝑥)は上に凸であり、賭け(1)の場合は 𝑥=2 のときに成長率最大となるので、現実には𝑥=1(常に全額を賭ける)が 𝑀(𝑥) を最大化することを示している。

賭け(2)の場合、𝑥=0.4のとき 𝑀(𝑥)が最大となる。そのときの 𝑀(𝑥) の値は

𝑀(0.4)=0.6×\log\{1+(1.5−1)×0.4\}+0.4×\log{1+(0.5−1)×0.4}=0.020136

となり、成長率は

\genfrac{}{}{}{0}{𝑋_𝑛}{𝑋_0}=𝑒^{0.020136×𝑛}=1.02034^𝑛

である。

これは賭け(1)で毎回全資産を賭けた場合の成長率 𝑋_𝑛/𝑋0_=1.01516^𝑛 よりも良い値である。𝑥 を 0 から 1 まで変化させた場合の 1 回当たりの成長率をグラフに書くと 下のようになる。

このように、賭け(2)のようなハイリスクハイリターンの賭けでは、一度限りの勝負では期待値が高くても、繰り返し行う場合は全額を賭け続けるとかえって損をする場合があり、𝑟の対数期待値を最大化するような適度な比率を毎回賭けることで、本来の成長率で資産を増やすことができる。

2ー1 節の、賭け(1)と(2)を 50 回繰り返した際の資産総額の推移のグラフで、賭け(2)については毎回資産の 4 割(最適比率)を賭けた場合のグラフは下記のようになる。勝ち負けの起きる順番は 2-1節 と同じである。

賭け(1)よりも賭け(2)で最適比率を賭けたほうがパフォーマンスがよくなっていることがわかる。

 

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