1-2. 株価の分布の正規近似 - 1

二項分布の正規分布近似

二項分布は正規分布で近似することができる。この意味と、株価の分布 に対する応用を考える。

試行回数n、確率pの二項分布 B(n,p)は、 nが大きいとき、平均 np、分散 np(1-p)正規分布 N(np,np(1-p))で近似できる*1。先のコイン投げ 5 回の場合は、𝐵(5,1/2)なので、𝑁(2.5,1.25)で近似できる 。

しかし二項分布は離散分布であり、確率は、「表が出る回数」であるとびとびの整数iについてのみ意味を持つ。一方正規分布は連続分布で、分布は定義域が (−∞,∞)確率密度関数で表される。確率変数の 1 つの値についての関数値は意味を持たず、関数をある範囲で積分した場合にその値が確率を表す。連続分布が離散分布を近似する、と いう考え方はわかりにくいが、以下のようなことである。

例として、コイン投げ5 回の場合の二項分布 を考える。二項分布と それを近似する正規分布をグラフに書いてみると、正規分布の曲線が二項分布の離散値である各点を滑らかに結ぶようにつなげる形になることがわかる。

例えばグラフ中でi=4の点では、二項分布の確率 p_4=0.15625である。同じ点での正規分布の関数値は 0.145074 であ る。 正規分布i=3.5から i=4.5まで積分することを考えると、積分範囲の幅は 1 なので、関数値自体がおおむね積分値となる。 これは、 図の長方形の面積である。(実際に積分した値はそれよりも少し大きく、 0.148728 となる。これは図中 A の部分の面積が B よりも少し大きくなるための効果である。)

二項分布は、コイン投げの例での表が出た「回数」のように、確率変数は0 から nまでの整数値をとる。それを近似する正規分布は、その確率密度関数区間[i−0.5,i+0.5]の範囲で積分して計算される確率が、各 𝑖での二項確率とほぼ等しくなる。 これが、二項分布を正規分布で近似する、という意味である。

 

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*1:一般的な書き方に従い、B(試行回数,確率),  𝑁(平均 ,分散 ) という表記にしている。 Excel の関数ではNORM.DIST( 値 , 平均 , 標準偏差 , 関数形式 ) のように分散ではなく標準偏差(分散の平方根)を与える必要がある。