株価の分布の正規近似
二項分布は正規分布で近似できるが、先に述べたような「1000 円の株が 1/2 の確率で 10 円下がるか 10 円上がる」株価の分布を正規分布で 表すにはどうすればよいか 。これを考える。
ここからは、問題を一般化して、「最初 円の株価が、 1 期間で 確率 で 円上がり、確率 で 円下がる」という場合に、 期間後の 株価 がどうなるかを考える。までの株価の動きを示したのが下の図である。
期間のうち 株価が上昇した期間数(二項分布の「表が出る回数」 に相当)を 回 とすると、は試行回数、確率の二項分布に従う。 二項分布は が大きいとき 平均 、分散の 正規分布で近似できる。
である。
である。を近似する正規分布 の確率密度関数は、 ,に平均 、分散 を代入して
である。は正規分布の定義域だからの 範囲の 実数である。近似の結果として、とびとびの整数値であるは連続値であるに変わっている。
一方、今求めようとしている株価の分布では、株価の上昇した期間数を
とし (下落は 回) 、株価 を の関数と考えると、 に対して、
と表せる。 したがって求める分布は、 上記の「二項分布を近似する正規分布」 の 定義域 を 、
に変数変換したものと考えられる 。
この分布を求めるため、次の確率分布の変数変換の公式を使う。
単純に変換した変数を代入するだけであればを 賭ける 必要がある。
今、変換後の求めたい確率変数は
だから、を元のについて解いた関数(逆関数)は、
となり、で微分すると
だから、求める確率密度関数は(の関数 なので 改めてと書くと) 、
となる。これを変形すると、
になっていることがわかる。
「最初円の株価が、 1 期間で確率 で 円上がり、確率 で 円下がる」場合の期間後の株価は 上記のように 正規分布する ことがわかった 。
「最初円の株価が、 1 期間で確率 で 円上がり、確率 で 円下がる」場合の期間後の株価は 上記のように 正規分布する ことがわかった 。