1-1.株価の二項モデル

二項分布(コイン投げ)

ここからしばらくは、株価の値動きは毎日一定額上がるか下がるかのどちらかで、上がるか下がるかの確率は毎回同じとして考える。このようなモデルを二項モデルという。

株価の値動きが1日後に確率1/2で同じ額だけ上がるか下がるか、だとすると、値動きはコイン投げと同じように考えることができる。

1000円の株が1日後に1/2の確率で10円上がるか10円下がるとき、 n日経過した後の株価S は、 n日のうち上がった日数を i日とすると、下がった日は(n-i)日だから、

 

S=1000+10i-10(n-i)

 

となる。これは、「最初1000円持っていて、コインを投げて表が出たら10円もらい、裏が出たら10円払う、というゲームを  n回続けて行い、勝った回数が i 回だった場合の所持金」と同じである。

コイン投げの結果は二項分布する。

表が出る確率が  P、裏が出る確率が  1-Pであるコインを n 回投げた時、表が  i回出る確率 p_iは、二項分布 B(n,P)に従い、

 

p_i=_nC_iP^{i}(1-P)^{(n-i)}

 

である。コインが偏りのないもので、P=1/2であれば、表がi回出る確率 p_iは、

 

p_i=_nC_i(\frac{1}{2})^n

 

となる。コイン投げの二項分布の場合、確率変数 は「表が出る回数」 iであり、例えばP=1/2n=5 の場合、 p_iは下の表のようになる。

i

0

1

2

3

4

5

p_i

0.03125

0.15625

0.3125

0.3125

0.15625

0.03125

 

これに対して今考えている株価の分布は、確率変数が株価 Sであり、取りうる値が950円(5回連続負け)から1050円(5連勝)までの20円刻みの値になる。表に書くと下記のようになる。

 

S

950

970

990

1010

1030

1050

p_i

0.03125

0.15625

0.3125

0.3125

0.15625

0.03125

 

これが求める株価の確率分布である。確率変数の値が整数0,1,2,…ではないのでもはや二項分布とは言えないが、各p_iは二項分布と同じ確率である。この分布は離散分布であり、確率はとびとびの Sについてしか意味を持たない。

このように、Sと二項確率の関係を使って50日後、100日後の株価と確率を求めて利用することもできるが、扱いやすくするため、この分布を連続分布化(正規分布で近似)することを考える。

 

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