第1章で述べた二項モデルと対数期待値最大化の関係について考える。
「確率で資金が 倍、確率 で 倍」になる賭けに毎回全資産の比率 を賭け続ける場合に、対数期待値を最大化する は、2-3節の式から、
を解いて、
である。一方で、資金が 倍になる賭けに資産の比率 を賭ける、ということは、 の資産が、 賭け金 を引いて賞金 が足され 、
になるということだから、 この賭けは、
「確率で資産が 倍になり、
確率で資産が 倍にな る」
ということである。 回賭けを繰り返した後の資産の分布は、1-7節で求めた対数正規分布
のの代 りに 、 の代りに を代入して、
になる。これが、初期値 、資産の割合 を繰り返し 賭けた場合の 期間後の 資産の確率分布である。
対数正規分布 の中央値は1-7節 で述べたとおり、で求められるから、この分布の中央値 は、
である。これを の関数とみて、中央値を最大化する を求めてみる。
中央値を最大化するにはの中の
を最大化すればよいから、この式をで微分する。
, とおく と、
だから、
これをゼロとおいて、極値を与える を求める。
だから、
だから、
となり、対数期待値を最大化する の値と一致する。
ケリー基準で求められる最適賭け金比率は、二項モデルで得られる対数正規分布の中央値を最大化するものであることがわかった 。